「規模の経済」とは?メリット・デメリット

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2024.02.14
  • コラム

規模の経済という言葉を耳にしたことはありますか?聞いたことはあるけれども、詳しい内容についてはよく分からないという人もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は規模の経済とはどういった意味なのか、メリットとデメリット、規模の経済を最大限活かすことができる業界について解説します。

規模の経済とは

「規模の経済」とは同じ条件で製品を製造していく過程で、その生産量や規模を大きくした場合に製造する製品1つあたりにかかるコストが低くなることを表しています。英語ではEconomies of scaleと表記されます。

「製品を製造するコスト」とは、2つに分かれ、1つが「固定費」。もう1つが「変動費」です。「固定費」については、人件費や工場の土地代・設備費などです。「変動費」は、製品を製造する数が変わると、その都度変動してしまう費用です。製造工程で必要となる光熱費や材料費、完成した製品を運ぶために必要となる運送費などが該当します。

固定費+変動費を合わせた数字を「生産数」で割った金額が、「製品1つあたりに必要なコスト」となります。よって、固定費を変えることなく生産量が増加した場合、製品1つあたりに必要なコストは小さくなることを意味し、そこから利益の増加に繋がります。

また規模の経済はたびたび「範囲の経済」「経験曲線効果」「スケールメリット」と混合されますが、いずれも違う意味となります。

範囲の経済との違い

生産する数を増やして製造にかかるコストを抑えるのが規模の経済である一方、範囲の経済は製品の種類や事業を増やすことで企業全体のコストを下げる効果のことを指します。

経験曲線効果との違い

経験曲線効果も、規模の経済と同様にコストを下げる効果を曲線で表したものです。ただ規模の経済との違いは、製造規模ではなく、経験値を上げることで効率が良くなり、コストを下げる効果が得られる点です。経験を蓄積してこそ得られる効果のため、一定の時間が必要です。

スケールメリットとの違い

スケールメリットは規模を大きくしたことで上がる利益や効果のことです。規模の経済の類義語と使われることが多いですが、規模の経済は規模の大小による影響を受けやすい経済活動を表します。

規模の経済のメリット

利益拡大が有利になる

規模の経済には「規模の利益」という別称もあります。生産する規模を拡大することで利益も大きくなり、うまく販路を利用できれば莫大な利益へとつながると言われています。

価格競争が優位になる

規模の経済をしっかり活かすことができれば、一つの製品を製造するコストは低くなる一方で、製造できる量は増えていきます。つまりコストを抑えながら生産量は増えている状態なので、競合他社との価格競争で有利に働くのです。一つあたりの製造コストが低くなれば、利益を維持しながら、競合他社より低価格で販売することが可能で、価格競争に強い企業はこのような流れで製品を生産、販売し続けられていることが多いです。

市場シェアを高められる

規模の経済が効いている状態というのは、市場に自社製品が多く出回る状態でもあります。品質を落とさずに価格を下げて、消費者により購入してもらうことで市場シェアを向上させることができます。

参入障壁を築ける

規模の経済を最大限活用し、製造商品の生産量や価格が圧倒的になると、競合他社は太刀打ちができないと考えて、参入しづらい状態となります。生産量と価格どちらの面においても市場を支配している企業よりも低価格で高品質の商品を作る必要があるため、参入する壁が高くなるので、他社参入のけん制となります。

規模の経済のデメリット

多額の初期投資が必要

規模の経済を効かせるためには大量生産できるだけの大きな設備が必要です。大量生産できる設備が整っていない場合は、大規模な工場・機械などの設備投資からスタートします。そのため中小・零細企業にとっては資金力のある大企業に比べて厳しい面があります。

「規模の不経済」に陥る可能性も

規模の不経済とは、規模を拡大しすぎたことによって起こってしまうデメリットです。生産量を上げるために、より多くの人材を獲得して人件費が大きくなったり、新たな設備を導入したりして費用が膨らんだりしたりしてしまう。このように規模の経済を効かせるために行った施策が裏目に出てしまい、固定費や製品単価が上がってしまうのです。このような状態に陥らないために、効果的な範囲を見極め、規模の不経済になるラインを把握しておくことが大切です。

売れなくなった時のリスクが大きい

売れなくなると経済の不経済へと逆転しまい、売れずに在庫を多く抱える状態になってしまいます。在庫を抱えると管理費も発生しかねず、業績がマイナスになる可能性もあります。製品の種類を増やして、規模の経済を効かすことができれば、一つの種類の製品の売り上げが落ちてもほかの製品の利益で不採算分をカバーすることもできるでしょう。しかし中小・零細企業が規模の経済を効かせようとしても製品の種類が絞られてしまうケースも多く、リスク分散がしにくいというデメリットがあります。

企業内でのコミュニケーションが取りづらくなる

規模が拡大し続けると、会社にとって大きなメリットになりますが、組織の中での連携やコミュニケーションにズレが出てくる可能性もあります。生産量が増えれば仕事量が増えるので、情報共有がスムーズでなくなるほか、社員の中に不満が募っていくこともあります。日ごろからのコミュニケーションが重要となります。

規模の経済が効きやすい分野と効きにくい分野

効きやすい分野

規模の経済が効きすい代表例は製造業です。
規模の経済は生産量が増えるほど1単位あたりの固定費が薄まり、全体のコストダウンにつながります。そのため事業コスト全体に対して、研究開発費や減価償却費、広告費など固定費の割合が大きいタイプの事業であれば規模の経済は効きやすいです。製造業以外にも、規模の経済が効きやすいのは研究開発費が大きいソフトウェア分野や人件費が大きいサービス分野、介護サービス分野などがあげられます。

効きにくい分野

固定費に対して変動費の割合が高い分野は、規模の経済が効きにくいと一般的にはいわれています。卸業や仲介業のように外部からの仕入れが大きい事業がこれにあたります。

規模の経済を活かす方法

企業の規模が小さくても、コスト構造や事業分野によっては規模の経済を効かせることが可能です。

アウトソーシング

自社で行っていた作業をアウトソーシングする方法です。それぞれが特定の分野に集中して事業を行っているため、経験を自社よりもはるかに多く積んでいます。規模の経済を効かせられるだけでなく、業務のクオリティも期待できます。

クラウドの活用

クラウドサービスはネットワーク環境さえ整っていれば自社でソフトウェアを購入しなくても業務ができます。会計ソフトや給与計算ソフトなど多くの基幹系システムでクラウドサービスが提供されています。このため自社で個々のソフトウェアを購入する必要もなく、固定費の削減が可能です。

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